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【PA入門】ステージモニタースピーカーの基礎知識

モニタスピーカーをステージに設置して音を出すというのは、特にライブのステージでは漠然とは分かっても実際どんなふうにするのか、慣れるまではイメージしにくいものです。

ここでは、あくまで初心者のために初歩的なことを書いていきましょう。

初歩的とは言っても卓の構造、特に信号のルーティング(どういうルートを通して音声信号を出力させるか) をよく理解する必要があります。

【実践】プリフェーダーAUXでモニターを出す

プリフェーダーAUXでモニターを出すじゃあさっそく実践してみよう。

ボーカル2名だけのライブ会場をシミュレートしてみました。

改めて理解して欲しいのは、赤の実線がメインアウトへの信号の流れ、青の実線がプリフェーダーであるAUX 1出力への信号の流れだということ。

こいうふうにプリフェーダーAUXでモニターを出しておけば、オモテの音に一切影響を与えないままモニターを調整することができます。

逆に、モニターに一切影響を与えないままオモテを調整できるということでもあります。

つまり、「客席で聴いた音のバランス」と「奏者が求めるモニターの音のバランス」をまったく独立に調整できるんです。

もしこれがオモテと連動しているポストフェーダー出力だったとしたら……「本番になったら、左の人の声がリハの時よりだいぶ大きいなあ。ちょっと下げよう」となった時、左の人を下げてオモテのバランスを取ったら、同時にモニターに出ている左の人の声も一緒に下がってしまって、具合が悪い……ということになります。

最近の(2012年初頭現在)卓では、各チャンネルのAUXトリムに対して「プリフェーダーにするか、ポストフェーダーにするか」選ぶことができるスイッチがついていることが多くなってきました。

私はそのような卓を持っていませんが、持っているとしたら、歌謡ショーなどでCDをカラオケにする場合にCDのチャンネルをポストフェーダーに切り替えます。

こうすることで、オケをフェードアウトする時にはフェーダー操作に連動してモニターの音もフェードアウトできるからです。

逆にこのオケまでプリフェーダーにしていると、オモテの音はフェードアウトしているのに返し(モニタ)の音は活きたままCDを停止させるまで出っぱなしということになります。

じゃあプリ/ポストの切替ができない卓ではどうするか。

仕方ないからポストフェーダーのAUXから返したいけど、それはエフェクターで使い切ってる。

困った。

……やりようはありますが宿題にしておきます。

持っている卓の仕様と、現場の要求を正確に把握し、即座に頭の中で接続作業を終わらせることができたら一人前……かな??

余談:ライブはミュージシャンとPAの協同制作

特にライブの場合、リハ中は卓の前でじっとしていることは勧めません。

ある程度中音がまとまったと思ったら、自分でもステージに上がって奏者の耳に近いところで自分でもモニターの音を聴いてみましょう。

仕込みの段階でいったん聴いてみて、そこから先は間違いなくイメージができるというのなら別ですが、それでも結構イメージとずれていることがあります。

私はアラフォー世代(本ページ執筆時点)ですが、若いミュージシャンだと、「中音、大丈夫?」との私からの問いに、結構簡単に「あ、大丈夫です。ありがとうございます」という返事が返ってきます。

でも念のためにステージに上がってみると、音圧が足りなかったり何だったりということがよくあります。

そんな時私は必ず次の手をミュージシャンに提案します。

「もうちょっと返し全体にローを足した方が、やってる感が出るんじゃない?」「あーさっきハウった時、削りすぎちゃったね。余裕ありすぎなくらいに削っちゃったから、いったん少し戻そうか?」などなど。

ライブは、ミュージシャンの出す声と音を単に客席に送るだけではありません。

ミュージシャンとのコミュニケーションの中で一緒に創っていくものです。

そういう意味で、普段から打ち上げには極力同席する、リハ中の休憩なら一緒にタバコでも吸ってみる(コーヒーでもいい)、そんな付き合いができているとお互いあまり遠慮せずに音への注文を出したり受けたりできます。

もちろん、コミュニケーションの相手がマネージャしかいない時もあるけど、その時はその時。

マネージャは奏者・歌い手を知り尽くしていますから、できるだけ多くの情報を引き出しましょう。

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ライタープロフィール

相田隆志

PA・音響

相田隆志

1972年生まれ、男。

鹿児島県の西海岸付近に在住。

時々、ライブハウスや屋外イベントのPAやってます。

ウェブサイト:http://ips.fc2web.com

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